世界中で「うなぎ」を食べる半分以上は日本人(年間7万t。そのうち天然は200~300t)だと言われており、「うなぎ」は古くから我々にとっては大事なパワーの源である大切な食であることには間違いないでしょう。
しかし、すでに皆様もご存知のように、日本うなぎが食べられなくなるかもしれないほど、養殖うなぎの元となる稚魚である「シラスウナギ」が獲れなくなってきており深刻な問題になっています。
また、独立行政法人水産総合研究センターが、6年前に「うなぎの完全養殖」に成功したとの報道がありましたが、未だに実用化の目処がたっておらず、海外のうなぎやうなぎの蒲焼を似せた擬似うなぎ?が話題になっています。
そこで、今回は「うなぎの完全養殖」関連について記載します。(写真は、シラスウナギ。写真提供:独立行政法人水産総合研究センター)
では、マダイやヒラメなどは産卵から生育させて、また産卵させるサイクルの養殖ができるのになぜ「うなぎ」は未だに完全養殖が実用化されていないのか?についてですが、これはうなぎの生態がよく分かっていないことが大きな原因だと言われています。
現在は、河口で初春頃にうなぎの稚魚である「シラスウナギ」を漁師が捕獲(指定された漁業者のみ)し、それを養殖業者が買い取って育て、市場に出回るのが一般の流れです。
ちなみに昭和30年代は約200t取れていた「シラスウナギ」が最近は14tまで落ち込み、特に平成25年は5tまで激減していたとのことです。
この現象は諸外国も同じで、今後ワシントン条約等では「シラスウナギ」の捕獲禁止も検討されているとのことです。
また、現在分かっていることは、川を上がった「シラスウナギ」は、川で数年間過ごして、産卵前になると川を降りて海に行き、マリアナ諸島周辺で産卵し、「シラスウナギ」になる前の「レプトセファルス」という平べったい稚魚が海面に流されて長い旅をし、再び河口まで来る間に「シラスウナギ」として成長するということです。(写真は、レプトセファルス。写真提供:独立行政法人水産総合研究センター)
では、なぜ、「シラスウナギ」が激減したのか?ですが、研究者によると「川が汚れており、天然うなぎの数が減っている」「地球温暖化の影響で、産卵する場所が変わった」などいくつかの説がありますが、今年はアメリカのメイン州のペマクイド川では大漁に捕れており、「シラスウナギ」の漁だけで、1人1日に数万ドル(数百万円)稼いだ人もいたとのことです。
しかし、これはアメリカうなぎであり、我々の大好きな日本うなぎではありません。
大好きな日本うなぎの完全養殖の実用化には残された大きく2つのハードルを必ず超えなければなりません。
一つ目は、「レプトセファルス」の入手しやすいエサの研究と開発(現在はサメの卵しか食べていない)で、二つ目は、「レプトセファルス」を大きくするための設備(現在は、20Lの水槽に10匹程度で、エサをやるたびに水を替えないと死んでしまう)の課題が残っています。
うなぎは、アメリカうなぎ、ヨーロッパうなぎ、台湾うなぎなど世界中にいますが、身の柔らかさや食感など「日本うなぎ」は一番美味であるようです。
東京大学大気海洋研究所の塚本勝巳教授らの研究グループが、グアム島周辺の海底で「抱卵したうなぎの写真」撮影にチャレンジするなど、早期の完全養殖に向けた研究がいろいろなところで日々行われていますが、概ねは国の大事な予算(税金)を使って「うなぎの養殖についての研究」が行われていることを皆様には、ぜひ知っていただきたいと思っています。
と言うのも、うなぎの完全養殖を実用化すればノーベル賞ものですが、島津製作所の田中耕一氏や日亜化学工業の中村修二氏などすばらしい世界的な研究は、ハングリー精神を持った民間のモチベーションも必要ではないかと思っていますが、民間企業との連携はほとんど受け入れてもらえないのが現状だからです。
最後に、早期に輸入に頼らない安くて美味しい「日本うなぎ」を食べることができるように期待すると共に、研究者以外にも釣り人の知恵で案外うまく実用化するのでは?と個人的にも心底思っています。(写真は、抱卵したメスうなぎ。写真提供:独立行政法人水産総合研究センター)